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何やらキリストどうやら盆踊り

なんと、スペインの話ではない。

前後編に分けたネタを前編だけ上げて放置した挙句、別の記事書くとかどうなのよ……とは本人が一番思っている。(というか本人以外はどうでもいいと思っているに違いない)

しかしながら、記憶の新しいうちに書いておかないといけないこともあるのである。やる気のある内に書いておかないと書く機会が永遠に失われることもあるのである。そのぶん、スペイン関連の記憶もやる気もどんどん霞んでいくわけだが……。


ということで、もう一月以上前の外国の旅行のことはおいといて、つい先日のお出かけのことである。

木曜の夜になって、急に土日が空くことになった僕は、ちょうどこの時に行われる「祭」に行くことにした。当然準備も下調べもしていなかったので、ずいんぶんあわただしい、行き当たりばったりの出発となった。

ソコにそうまでして行きたいかというと、実はそこまででもなかった。だいいち現時点で出かけたいところは他にたくさんあったのだ。特に島に行きたかった。島、いいよねえ……。
しかしながら、ソコにはどうしても行きたいという欲求はなくとも、ずっと以前からいつかは行っておきたいと毎年思い続け、のどに刺さった小骨のように気がかりになったままだった。そして、その日に行かないといけない理由は、他の行きたい場所にはなく、ソコにしかなかった。

そんなわけで、どこか昔の自分への義務感のように向かった行先は、ラテンとは対極にあるようなイメージの、青森。東京駅からはやぶさに乗って数時間、いちご煮せんべい汁の八戸に降り立った。

そしてすぐに八戸線に乗り換え、着いたところは「鮫駅」。

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「鮫」。いい地名だ。外国の人はつい「セイム」と読んでしまう……かはわからない。

ウミネコの街 鮫
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どっちだ。
ウミネコ推しということは、魚の鮫は関係ないとこなのか?

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と思えば、まんまサメのオブジェもあるし。よくわからない。

だがここがウミネコの街であることは間違いなかった。

駅から歩いて10分ほどでの距離に、最初の目的地・蕪島はある。島とあるがおもいきり陸続きである。こんなことでは島欲求は満たせない。満たすために来たわけではないが。

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すでに遠目からも隠しようもないほどいっぱいいる。

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それもそのはず、この神社をいただく高台から奥の一帯は、ウミネコの一大繁殖地なのだった。

ウミネコ

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ウミネコ

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ウミネコ

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階段から鳥居から何から何まで神社の敷地そこらじゅう、足の踏み場もないほどにウミネコが転がっている。落ちていると言ってもいい。人が行き来する道にも、逃げる気皆無で野放図にいる。

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雛さえもだ。
この時期はちょうど繁殖シーズンなのであった。

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こちらが気をつけないと、踏みかねないほどの繁殖ぶりである。ちょっと自由すぎやしないだろうか。

しかも向こうは子育てということもあってちょい強気だ。ちょいちょい威嚇される。だいたいウミネコの顔が、怖い。

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怖い。

雛も雛なのにあんまりかわいくない。

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このくらいだとややかわいい。

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卵も手の届く場所に転がっている。もうちょっと人間を警戒してもいいのではないか。
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神社の奥は広大な立ち入り禁止エリアになっているのだから、みんなそっちで繁殖すればいいと思うのに、ウミネコはほうはおかまいなしである。

もちろんその広い無人のエリアもウミネコだらけである。

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ウミネコ地獄である。
岩や地面が白いのはフンのためである。フン地獄でもあるのだ。W地獄の贅沢な光景がここにある。動物の子供にまみれながら、イマイチほんわかできないという貴重な体験もできるステキな場所だ。

しかし私は大量のかわいくないウミネコ見るため来たわけではなかった。

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八戸市水産科学館で妙なポーズのフサギンポを見たり、

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チンアナゴらしきものを食っているモズクショイを見たりもしたが、もちろんそのために来たわけでもない。

イワシの群れを漁師に教え、八戸太郎と親しまれたクジラが石になったという伝承のある、西宮神社の鯨石を見たり、
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天然芝の海岸、種差海岸を見たり……

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したが、そのために来たわけではないのだ。これらは全て余禄である。

八戸は宿泊のために寄ったにすぎない。翌日こそが本チャンなのであった。この日の全ては前座なのである。

この記事もまだ前振りなのである。割り込んで書いている記事だからなんとか一本に収めたいのに、また前振りが長くなってしまった。画像もこの時点で20枚を超えてしまった。…と、書いているのも記事を長くする要因なので、とっとと続けよう。

――そして迎えた翌朝。

陸奥湊にある、館鼻岸壁の日曜朝市を訪れた。まだ八戸かっ、とは言わないでほしい。市場があるなら訪れたいのが人情である。

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せんべい汁を食べ、

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馬肉鍋を食べ、

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虫の形をしたグミを食べ、

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カレーパンを食べて腹いっぱい僕は、ようやく本来の目的地へ行くためレンタカーに乗った。しかし、なんだこの節操のない朝食は。


八戸から車で約1時間、たどりついたのは新郷村

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この村名を聞いてもうピンときた方もいるかもしれない。

2015年6月7日、この日はここである祭りが行われたのである。それこそが、今回のお出かけの目的だった。

その名も「キリスト祭」。知る人ぞ知る、だがわりと知られている祭りである。

知っている人には今更なのだが、ここである「伝説」について説明しなくてならない。

かのイエス・キリストは生涯は、信心に関係なく多くの人の知るところだ。ローマ政府に売られた彼は、ゴルゴダの丘に磔にされて刑死した、と。

……しかし、実は磔にされたのは身代わりとなった弟・イスキリであり、イエス本人は密かに生き延び、長い旅の末に日本に行きついてそこで終焉を迎えた――という異(珍)説があるのだ。

そしてその終焉の地こそ、かつては戸来(へらい)村と呼ばれた現新郷村であり、その墓もここに現存するのであるッ!!

オカルト界隈ではまあわりと有名な話ではある。

与太話と言うなかれ。
「戸来」とは「ヘブライ」を連想しないだろうか。
この地の古い風習の、赤ん坊の額につける魔よけの印が十字であることは偶然だろうか。
さらにこの地に伝わる盆踊りの歌「ナニャドヤラ」の不可解な歌詞がヘブライ語で解読できるという説もある……。

歴史の真実がこの地に眠っているのである…ッ!!
……というのは言い過ぎだ。かなり。

実際のとこ、事実として明確なのは、風習と歌の存在だけである。由来不明の塚もあることも確かだ。
しかし、この地にそんな伝承が残っていたわけではない。

この「伝説」は、ある人物とある文献によるものである。それがどんな人物であり、どんな「文献」であるかはググればすぐにわかるし、面倒くさいので割愛する。眉に唾つけてから検索してほしい。

ともかく、この土地にとっては昭和十年にその「文献」がらみの人間が訪れてもたらした、いきなり降ってわいた話なのである。「墓」もその時「古代史研究家」によって「発見」されたのもだ。

歌の歌詞がヘブライ語であるというのも、大正時代の1人の神学博士が唱えた説だが、言語学者やヘブライ語に精通した人がそれを保証したことはない。ちなみに、かの民俗学者柳田國男は、「何なりともせよかし、どうなりとなさるがよい」 とし、祭の日に、女性が男に向かって呼びかけた恋の歌としているし、他説もいくつかある。僕には「何やらどうやら」が訛っただけにも思える。

そもそもこの歌は、新郷村だけに残されているわけではなく、岩手や秋田のほうにまで広く伝わっているものだ。

だから、この話を丸呑みするのはだいぶ軽率だし、のん気にロマンと言ってしまうのもどうかという気もする。話の大元である「竹内文献」は、まあようするにでっち上げなわけで、その根底にある思想も考えると、無防備に持ち上げるのは危うい。
とはいえ、デタラメだとして頭ごなしに一蹴するのももったないネタ…もとい話だとも思う。

ではそれじゃあ、そんな降ってわいた「伝説」に対して、土地の人はどう判断したのか。

「キリストの墓」と隣接する「キリストの里伝承館」のチラシや、村のサイトを見ると「湧説」「突拍子もない仮説」などの言葉が散見される。その一方で、トンデモ扱いしてちゃかす雰囲気もない。
冷静に距離を置いて信じこそしないが、はっきりと否定もせずに受け入れている様子が見られる。

その一つの表れが、この「キリスト祭」だ。
この祭は、キリスト教の祭事などではなく、なんと墓のキリストを「慰霊する」祭なのだ。

うそかほんとかはおいておいて墓があるなら慰霊する――シャレと優しさとしたたかさの入り混じる、なんともゆるくておおらかな受け入れ方だ。

それとも「そんなおいしいネタ、利用しなくてどうするよ?」と僕みたいな脳の人がいたのかもしれないが、それはばかりはおしはかりようもない。

そんなわけで、この村では毎年一度、「キリスト祭」として慰霊祭が行われているのである。
神秘というには不思議度の足りない、カオスというには優しい、ネタというにはマジメな、このゆるグレーなこの祭に魅力を感じる人は少なくなく、僕もいつか見てみたいと思って、今回ようやく叶ったのである。

キリストの墓は普段も観光スポットとして訪れられ、駐車場もあるが、十数台しか停められないので、、祭の日は関係者の車で埋まってしまう。そのため、この日は近くに臨時駐車場ができていた。また、村の中心部からもシャトルバスが出ているらしい。

車で来た僕は、警備の人に誘導されるまま、臨時駐車場と言う名の空き地に停めて、墓のある会場に向かった。

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え…52回もやってるの!?

半世紀以上も続けているのならば、昨今の状況を鑑みれば「伝統行事」と言ってもいいくらいの年期だ。

祭開始の1時間前に着いたので、まだ人はまばらだった。

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祭壇を見てわかる通り、慰霊祭なので、神式で行われる。キリストに神式、というのはいささかシュールな気もしなくないが、キリスト教にはキリストを慰霊するなどという概念はないだろうし、神の子に仏式というわけにもいくまい。ベストなチョイスなのではないか。……いやどうだろう。

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さあこれが「キリストの墓」だ。戸来塚とも呼ばれる。十字架は「発見」後つけられたものなのだろう。土まんじゅうに十字架…ビジュアル的は最高にそそる。

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墓は二つ並んでいて、もう一つは弟イスキリのものとされている。弟はこっちで死んでないけども。

二つの墓の間には石碑が埋められている。

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なんとイスラエル大使も訪れているようだ。まあユダヤ教じゃねえしとか思ったのだろうか。真ん中の白い石は、エルサレム市から友好の印に贈られた「エルサレムストーン」という大理石だそうだ。

時間があるので、先にキリストの里伝承館を見学。

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昭和初期の村の民家の居間を復元してあるが、人形のチョイスのせいで、だいぶシュールな感じに。

民具の展示も興味深い。

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だから人形がね。わざと濃い顔選んでるよね。

世界の不思議が記された不思議儀。

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日本は地元の二つがエントリー。

奥は、キリスト・ユダヤと土地の風習を結び付けた展示と、この「伝説」の「主犯」である、竹内文献コーナーになっている。

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生来のツッコミ魂をむずむずさせながら見学を終えた後、この村の産品である飲むヨーグルトでのどを潤した。

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そしてついに慰霊祭が開始。
これが式次第。

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なんか、普通の行事っぽい。

関係者の挨拶から始まり、地元の神主による祝詞に続く。

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参列者は地元の関係者の他、議員など。ますます行事っぽい。神秘やロマンとは程遠いが、この世俗っぽさとキリストの慰霊というトンデモの組み合わせが、実にいい。ちなみにこの日は青森知事選挙が行われていたので、知事は代理が出席。でも誰の代理ということになるのだろう?
なんとかすぎるなんとかの人も来ていて、あれ?この人は別の市の人じゃない?と思っていたら、肩書は「飲むヨーグルトファン代表大使」となっていた。いろいろやっているんだね。

かしこみしたあと、奉納神楽へ。

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戸来獅子舞というものらしい。

神事が終わり「キリストの里公園短歌入選歌発表会」へ。獅子舞の写真の手前にも写っている、ここに設置されたポストに投かんされた短歌のコンテストの入賞者を発表し、選評を行うのだ。

そしてようやく祭のクライマックス、もう一つの奉納舞「ナニャドヤラ」が行われた。

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キリストの墓の周りを囲んで踊る、ソレは完全に盆踊りだった。いやもちろん初めから盆踊りなのだけど、想像してたのよりはるかに盆踊りだった。

神秘のカケラもないが、慰霊だから盆踊りでいいのである。十字架の刺さった墓の周囲を回るビジュアル、というのがかなり独特ではあるが。

そんなわけで、木漏れ日の下で行われる盆踊り「ナニャドヤラ」は、少なからず期待していたカオスな雰囲気などなく、どこか爽やかで、ゆったりとした気分にさせてくれる。

こうして、祭は終始のんびりとした空気の中つつがなく行われ、リンゴジュースでの乾杯で締められ、1時間半ほどで終わった。

祭のあとは、伝承館前の広場で一般の人も交えての「ナニャドヤラ」がアンコール的に舞われていたが、僕にそれを眺めている暇はない。
すみやかに土産物をチェックしなければならない。
イベント以外で、こうしたスポットで期待されるのは、グッズであるからだ。

伝承館のお土産コーナーには、オリジナル木製ロザリオや、絵はがき、「ナニャドヤラ」のCD、手ぬぐいのほか、村の名産品など。

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CDは通販で購入済みだったので、手ぬぐいを買う。どうしても手ぐいは買ってしまうのである。買わずにはいられないのである。

さらに墓のふもとの向かいにも、その名も「キリストっぷ」という名のショップがある。

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Tシャツがわりといい値段である。

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ここにもオリジナルタオルや手ぬぐいががが。買ってしまう……。

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東北ずん子バージョンの「ナニャドヤラ」って……。ボーカロイドて……。これが一番攻めてるグッズな気がする。

こうして、祭のゆったりとした空気に満たされたせいか、なぜかとても穏やかな気持ちで、「ナニャドヤラ」の歌がエンドレスで聞こえてくる会場を後にしたのであった。


その後、この地のもう1つのオカルト物件「大石神ピラミッド」(山の中の岩場だが…)や、ちょっと足を延ばして十和田湖まで行ったのだが、それはともかく道中見つけた虫の写真の方が大事だと思うで、それで締めたいと思う。

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ブドウスカシクロバ?
瑠璃色の触角がキレイ。

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ヒョタンゴミムシ?
死んでいるのか死んだふりなのかわからなかった…。

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ハマベオオハネカクシ

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毛虫s
画像で見るとかわいいんだけどなあ。生で見るとまだちょっとぎょっとする。

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ムモンベニカミキリ?
触角ギザギザ。

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ヒゲブトハナムグリ
触角モコモコ。

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カミキリ2
飛んできたのでつい捕まえてしまった。

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シラヒゲハエトリ
お腹パンパン。